福田復彦
ある調査によれば中南米でブラジルとメキシコが最も汚職が多いそうです(注)。
通常社会的地位の高さと利益享受の機会は比例することは社会生活を営む中で当たり前とされています。メキシコの場合も地位が高くなるにつれて、諸々の面で受益機会が増えます。それのみならずその地位を利用した反社会的道徳行為の機会も増えます。特に政治家や公務員などは地位と権力を利用した反社会的行為を自己の優越性と特権の行使の機会と考える人が多数います。
そのために法治主義より人治(知)主義が発達し、上位の者と個人的に結びつくことによって大きな利益が獲得でき、その機会を与えてくれた者に対してそれ相当の謝礼をしで強い絆が生まれ、さらに両者の利益獲得の関係が深まります。
またメキシコの場合は革命時代の統領主義の親分子分的関係の伝統が根強く残っていて、例えば、大統領が変われば守衛まで変わるほど上下の絆が強く大統領の任期6年間で得られた地位と権力の最大利用を図ります。
カトリック圏諸国に多い伝統的習慣で”Compadrazgo”(コンパドラスゴ:代父母制度)があります。本来は生まれた子供の教会での洗礼式に立ち会う実父母以外の友人夫婦などを代父母と呼びます。現在はこの宗教的な意味が薄れて、実父母の子供を通して代父母との親密な関係を構築します。簡単に言えば,もし実父母が何らかの理由で子供の養育が不可能となった場合には、代父母が代息子または代娘として養育するという制度です。一般的に実父母は自分達より社会的に地位の高い代父母を望み、両者の間には非常に強い精神的のみならず実利的な親分子分的な強い相互関係が生まれ、汚職などの温床になることがあります。
カトリック信者でもなく外国人の筆者でも2人の女児の代父ですが、実父たちとは友人で自営業者ゆえに何ら実利的な関係は生まれることはありませんので、この制度が単なる習慣的なものになってしまっています。一人の代娘は結婚して子供もいますが、今でも代父と代娘の関係は続き時々連絡し合っています。
大多数のメキシコ人は国家の機構自体が反社会的道徳の上に成り立っていると不信感を抱いており、そこに社会的正義や公平は存在しないと考えているのが現実です。よって何か法律的問題が発生しても、裁判に訴えるより、和解を選択します。司法への不信感として「最良の判決より、最低の和解の方が優る」と言う考え方が彼らの根底に存在するからです。
(注)中南米の「2020年の汚職撲滅能力指数」、ブラジルとメキシコが最も悪化2022年6月23日ロイター https://jp.reuters.com/article/world/-idUSKBN2O406P/
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