164)13. 1Kグローバルパーソンの「追いつけ追い越せ」日本精神論2025年5月5日 福田復彦

1-1日本人のアイデンティティ

武士道精神は現在の日本人の精神の中に暗黙知として残っています。

同じタイトルで話を続けます。明治に入り武士階級が法律的に廃止され武士道が消滅していくことに、新渡戸稲造はその理由を「武士道は深遠な哲学を持ちおらず、それの訓育では形而上学の訓練が重視されなかった」と新たな欧米思想の時代の中に生きる術を失ったことを冷静に見つめていました。さらに「(明治時代に)幾人かの若い日本人が科学研究の領域において、世界的な名声を博しているにもかかわらず、哲学の分野で一家を成した人はまだいない」。

このように、著者は武士道が美しい精神性を包含することは認めても、欧米と並ぶ近代国家日本の建設その繁栄を達成するためには、プラグマティズムへの変更可能な西欧的哲学思想を根源とする新たな思想の誕生の必要性を喚起していた稀有な知識人でもありました。

恐らく彼は当時の西欧的な騎士道精神と比較して、急激に変動し欧米的に変化しつつある日本を目の前にして、ノスタルジックな思い中に著書「武士道」を一つの理想像として著したとも考えられます。

その理由として、武士道の中心的な価値観には、忠誠・犠牲・礼儀・質素・倹約・尚武などが含まれ、これらの思想は自己犠牲をものともせず誠でもって成し遂げることが武士の本筋です。そしてその精神は日本人の一人一人の中に血肉として引き継がれ根付いていたはずです。それでなければ、明治の中期頃までにいかような形態であれ、世界の5大国の一つとして日本の近代化の達成は不可能であったはずです。

第二次世界大戦で我が国が敗退した後には、武士道精神は表向きには否定され日本人の精神は大きく変化しました。しかし全国土が灰燼に帰しても、短期間のうちに戦前以上の復興を遂げ、世界第二の経済大国まで駆け上がったことは、武士道は当時の日本人の内に日本文化として深く根付き誠の精神が生きていたからだと想像されます。

昨今の日本社会に武士道的精神論を唱えることは時代錯誤でしょう。しかし、例えばスポーツ精神の中にその残影が暗黙知的な徳として存在していることは万人が認めています。

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